MEサービス部

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MEサービス部の組織体制

院内中央診療部門として、麻酔科教授・磨田 裕部長のもと、関口 敦課長以下38名の臨床工学技士で構成されています。病院の性質に合わせ、当直および呼び出し制にて24時間いかなる緊急症例にも対応する体制を構築し、専門かつ高度な医療に貢献できる部門として、患者様および医療チームから信頼される専門家(プロフェッショナル)集団を目指すとともに、多職種で構成されるチーム医療において、その連携を深める役割を果たせるよう心掛けています。 現在、部員を主たる活動領域の「循環器・手術部関連業務」(=ME室1:16名)と「血液浄化・機器管理関連業務」(=ME室2:21名)の2つに分け、業務展開しています。

業務概要

MEサービス部全体の業務内容を表に示します[表1]。
表1

ほか、医療安全対策、医療機器治験業務にも参画

これ以外に、学生教育において、同敷地内に併設の埼玉医科大学保健医療学部医用生体工学科の学生を主として、毎年数校からの臨床実習を年間通して受け入れています。特に本学学生に対しては、入学初期の臨床現場見学の受け入れから始まり、臨床工学技士免許所有の教員との密な情報交換を図るなど、臨床現場を意識した学生教育にも力を入れています。
以下、「ME室1」の業務のうち、心臓血管外科関連の勤務体制、業務内容について述べます。

<勤務体制>循環器・手術部関連業務のすべてを全員で対応できることをモットーとし、汎用~専門の複数領域の知識・技術を習得するとともに、領域横断的な業務が遂行できる体制としています。特徴として、①曜日ごとに各領域の仕事量が異なる、②心臓外科・内科ともに緊急症例が多いことが挙げられ、業務配置が日ごとに流動的であるとともに、時間刻みで業務を掛け持ちすることも珍しくありません。夜間・休日の緊急症例には、呼び出し制(オンコール)で対応しています。


<業務内容>
1)人工心肺(体外循環)
「SIMPLE IS SAFETY」
当院の人工心肺のスタイルを端的に現したワードです。
ごく教科書的かつJaSECT(日本体外循環技術医学会)標準システムである、落差(+陰圧補助)脱血・ローラーポンプ送血による開放型システムを基本とし、成人も小児も症例を選ばず、すべての体外循環を同一のシンプルなスタイルで操作することが「安全」に通ずると考えています。同時に「SIMPLE IS SAFETY」でもあり、それらの思考のもとにシステムを構築しています。当院の人工心肺回路図を[図1]に示します。

図1

人工心肺操作担当者は11名(うち1名はトレーニング中)で、そのうち8名が体外循環技術認定士です(2015年11月現在)。
人工心肺装置は4台所有しており(うち1台は、メイン装置のバックアップ用および胸腔内温熱化学灌流療法用として使用)、同時に3列の開心術に対応しています。人工心肺操作を主業務として、各症例2名で担当します。内容としては、①人工心肺の主操作、②操作記録、③心筋保護液注入の操作、④術中計測、⑤ペースメーカー・除細動器・補助循環の操作を担当します。 成人の心筋保護は、血液併用心筋保護液として、ミオテクター®(初回はK+を10mEq/L追加)と血液を2:1の割合で、順行性に300mL/min、回路内圧200mmHgで1500mL注入します。追加は20分間隔で、割合を1:1に変更し、逆行性に流量200~300mL/min、先端圧20~40mmHgで4分注入します。小児も同様の割合で、すべて順行性に30分間隔で注入します。流量10~15mL/min/kg、注入量は10~20mL/kgとしています。また、成人の低侵襲心臓手術(MICS)ではBretshneiderを約2,000mL、6~7分かけて順行性注入し、約120分の心停止を得ています[表2]。

表2

循環停止を伴う大血管症例についても同じシステムをベースに、順行性脳分離灌流は送血回路を分岐させ、主送血ローラーポンプひとつで操作するスタイルとしています。循環停止中の血液心筋保護の血液取り込み時の人工肺陰圧防止のため、送血ポンプをシャントする回路(通称:グリーンシャント)を設け、専用ローラーポンプ1基にて人工肺への連続流を維持する方法を取っています(人工肺出口からサンプリングラインが常時開放)。200mL/minの流量一定で人工肺を常時陽圧に保て、循環停止中の分離灌流の有無を気にすることなく、突発的なフローダウンなどの送血ポンプ操作を通常体外循環と同様に行えます。
小児体外循環については、限外濾過への取り組みとして、重炭酸リンゲル液をベース液としたカクテル溶液(500mLに対し、20%アルブミン5mL+メイロン5mL+マンニットール5mL添加)を置換液として用いたり、体外循環中のDUFを限外濾過流量50mL/minの低流量かつ、大動脈遮断・解除時、輸血時などに限定して消極的に施行する(通称:消極DUF)などにより、水分バランスや血小板温存に対して効果を得ています。
術前カンファレンスにも参加し、症例ごとの特殊な手技の指示受け・ディスカッションを行うなど、外科医と良好な信頼関係が築けるよう努めています。
また、心臓血管外科、小児心臓外科ともに、それぞれ複数名の独立した術者がいますが、新浪 博士教授、鈴木 孝明教授を筆頭として、使用カニューレや心筋保護法など、「安全」を意識してシステムおよびスタイルがほぼ統一されており、外科医とともに「SIMPLE IS SAFETY」を実践しています。人工心肺症例のハイヴォリュームセンターとして、患者様に対して安全確実な操作環境を構築できるよう日々精進するとともに、現在、当部では上述の「日本体外循環技術医学会(人工心肺の主たる学会)」の事務局の運営ならびに2名の理事を擁すなど、業界への貢献使命も果たせるよう常に意識して従事しております。

2)人工心肺非使用心臓手術の循環補助
当院のCABGのほぼ100%はOff pumpになりますが、術中はモニタリングをはじめとして、自己血回収装置、ペースメーカーの操作、スタビライザー吸引圧の調整などを担いつつ、急変時の循環補助装置導入対応のため、常に室内スタンバイしています。循環補助装置への移行は年間1例あるかないかの頻度ではありますが、外科医からの要求に的確に、かつ迅速対応できるよう心がけています。
また、近年ではTAVIのハートチームの一員としても参画しています。術前から術中、術後を通した周術期関与の中でも、TAVIの特異的な患者背景(高齢、開心術経験例など)からくるハイリスク性に対して、循環補助装置のスタンバイは非常に重要となります。急変時の即時対応のため、第一ステップとしてPCPSを、次ぐ手段として、動脈フィルタ内蔵型人工肺のプレコネクトシステムをスタンバイして臨んでいます。

3)補助循環
IABP 、PCPS、小児ECMOの速やかな導入・装着から安定動作、安全管理を担っています。補助流量管理、人工肺ガス調整、抗凝固管理、移動時の介助などのほか、スタッフへの教育や安全チェックなどを随時行っています。補助人工心臓については、人工心臓管理技術認定士3名を中心とし、日常の駆動条件調整、装置の安全管理、リハビリテーション時の装置介助などと、体外設置式の場合にはポンプ内の血栓発生有無の監視を病棟スタッフと連携をとりながら行っています。最近は植え込み型の導入に伴いその割合も増し、複数機種に対する病棟スタッフへの教育を始め、患者・家族への退院に向けた教育・指導のほか、トラブル対応、定期メンテナンス、外来フォローなども重要な業務となっています。

4)心臓移植ドナーチーム
外科医2名、看護師1名とともに、当部技士2名にて摘出病院に出向き、心停止液の注入操作、搬送用保護液の管理などの役を担っています。