教授挨拶
当センターは埼玉医科大学病院から心臓病センター、包括的がんセンター、救命救急センターの3部門に特化した病院として平成19年4月に開院し、埼玉西部や周囲の都県の中核的な病院を担ってまいりました。当センターの特徴として、あらゆる心臓病に対して対応できるエキスパートのスタッフがいることです。従来の心臓手術に加え、低侵襲な小開胸手術(MICS)やステントグラフト手術、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)、また重症心不全に対する補助心臓植え込み術や心臓移植に到るまで、全ての治療を行なっております。近年の外科手術の進歩は目覚ましいものがあります。従来救えなかった疾患が高い確率で救命できるようになりました。治療方法も多様化し、従来の救命を第一とする治療から術後のQOLや遠隔期も見据えた治療方法の選択が非常に難しく、また重要になってきました。当院では、心臓内科や放射線科などの科の垣根を超えたチームで検討し、一つの治療方法にとらわれることなく、患者さん個人個人により最適な治療方法を提供するように心がけております。埼玉県、特に西部は人口当たりの医師が少ない地域です。当センターは地域の病院との連携を密にし、高い水準の医療を提供していければと考えております。
大学病院の使命として教育、研究があります。心臓外科医としての教育は、主に手術、周術期管理などが挙げられます。心臓外科を目指す若い世代の医師は、手術の腕を磨きたく血気盛んな(?) 人々が多いです。当然それに見合った技術の習得を共に目指していきます。一方当院は手術件数も多く、正直忙しいと感じることも多いとは思います。働き方改革が声高に言われる昨今、もちろん医師の生活や休養を守ることは大事なことです。ただ、医者、特に外科医にとって休養や生活以上に自分の手で患者を治し、元気な姿で退院されていく姿を見ることは何にも増して喜びを感じるものだと思います。そのような喜びを多く感じ成長してもらえればと思います。若い世代の医師は外科医としてももちろんですが、社会人として、また人として成長する必要があると思います。当科ではそのような教育を目指していくつもりです。一人でも多くの若い世代の志のある外科医が学びにきてもらえるような施設になればと思います。
一人一人の患者さんに接する際に、疑問点や医療の限界を感じることは多々あります。そのようなことに対し新たな知見や治療法を考え出すことは我々の使命と考え、研究の第一の目的と思います。他科や他施設と共同し継続的な研究を行い、世界に発信し医療の進歩の一翼を担っていければと思います。
今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
埼玉医科大学国際医療センター 心臓血管外科
吉武明弘