弁膜疾患
1. 心臓の弁とその役割
2. 弁膜症とは
a.大動脈弁狭窄症
原因は加齢による動脈硬化性が現在では最多です。その他に先天性の二尖弁(正常では弁尖は三尖あります)の場合があります。正常では薄い弁尖が肥厚・石灰化しうまく開かなくなってしまいます。そのため弁の前後で圧較差が生じ、十分な血圧を維持するためには左心室の内圧を圧較差の分だけ高くしなければなりません。そのため心臓に負担がかかることとなります。うまく開かなくなった弁は薬を飲んでもうまく開くようになる訳ではないので治療としては手術することとなります。
この疾患は自覚症状がなかなか出現しないため、失神・胸痛・心不全などで症状がでたときは病変はかなり進行しており、適切な治療をしないと2−5年で死亡するといわれています。これらの症状が出現する前に手術を行うことがその後の経過を考える上で大切です。
b. 大動脈弁閉鎖不全症
原因としては弁の変性によるものや感染、大動脈疾患に伴うものなどがあります。大動脈弁狭窄症の変性とは異なり弁尖の組織や構造が劣化して脆弱になりうまく弁が閉まらなくなります。一度左心室が押し出した血液が逆流してくるために、ポンプの仕事の効率が悪いのです。仕事上残業が増えるようなものです。全身へ押し出す血液量を維持するために逆流する分も足さなければならないので、その分左心室は拡大してきます。一回あたり正常より多い量を押し出さなくてはならないため心臓に負担がかかります。
c. 僧帽弁狭窄症
原因としてはリウマチ熱によるものがほとんどで、現在では減少しています。左心室屁の血流の流入障害となるため、血流の上流である左心房や肺の血管に負担がかかります。左心房に負担がかかる結果心房細動という不整脈を起こしやすくなります。心房細動では左心房の中で血流が鬱滞し血栓(血液の固まり)ができて脳梗塞の原因となることもあります。肺の血圧も高くなり呼吸困難が出現してきます。
d. 僧帽弁閉鎖不全症
原因としては僧帽弁狭窄症と同様にリウマチ熱によるものは減少しており、弁の変性によるものがほとんどです。弁の組織が脆弱化し腱索(弁尖を支えるひも状の組織)が伸びたり切れたりして弁が閉まらなくなります。その他に感染や心筋梗塞によるもの、心筋症という心臓の筋肉の病気で発祥する場合もあります。息切れやむくみが出現してきます。
e. 三尖弁閉鎖不全症
弁尖の変化による単独の疾患として治療の対象となることは少ないです。ほとんどが僧帽弁疾患の結果右心室にも負担がかかり、弁輪(弁の付け根)が拡大したため弁尖がうまく合わさらなくなり逆流が生じます。
3. 弁膜症の治療
一般的には弁置換術が選択されます。最近では適応に基準がありますが、リスクの高い方にはカテーテルによ留弁置換術も行われるようになってきています。
b. 大動脈弁閉鎖不全症
置換術が行われることがほとんどですが、最近は形成術が試みられる用になってきました。しかし僧帽弁閉鎖不全症に対する形成術ほど安定した成績はでていません。
c. 僧帽弁狭窄症
カバルーン付きテーテルを使用したり直視に癒合して硬くなった弁を切開したりする交連切開術もありますが、多くは弁置換術が行われます。
d. 僧帽弁閉鎖不全症
リウマチ熱や感染が原因となる場合は弁置換になることも多いです。しかし原因のほとんどを閉める変性による閉鎖不全症の場合、形成術が第一選択となります。成績も安定し逆流の再発による再手術も10年で10%以下で良好な安定した成績が得られています。
特殊な場合は弁置換となることもありますが、ほとんどは拡大して緩んだ弁輪を人工弁輪を使用して締める弁輪縫縮術が行われます。