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MICSとはminimally invasive cardiac surgeryの略で、低侵襲心臓外科手術のことです。当院で行っているMICSの対象術式は、左小開胸で行うオフポンプ冠動脈バイパス術、右小開胸で行う僧帽弁形成術や心房中隔欠損閉鎖術、胸骨部分切開で行う大動脈弁置換術などがあります。
通常の心臓手術では胸骨を全切開するため胸の真ん中に20cm程度の創がつきますが、低侵襲手術では創が5cm程度と小さく、胸骨を温存するために痛みが少ない、輸血が少ない、治癒が早い、創感染のリスクが低い、運動や車の運転などの制限がない、社会復帰が早い、美容面に優れるといった利点があります。手術後の入院期間は7日から10日程度で、早い方では術後2週間で、平均的には3~4週間で仕事への復帰が可能となっています。
術野が小さいため特殊な手術器具を使用することと視野展開にコツを要しますが、器具の使用に熟練し、コツを熟知していれば通常手術と変わらない手術時間で、同様のクオリティの手術を行うことが可能です。
MICSでは術野からは心臓の一部しか見えないので麻酔科で術中に行う経食道エコーの役割が非常に重要であり、また人工心肺を使用する手術では臨床工学士との連携が重要になります。当院では年間500例以上の開心術を行っているため、麻酔科医、臨床工学士ともに日本でも屈指の経験と技術をもっており、外科医は安心して手術を行うことができます。
胸郭の変形のある方、胸部外傷や胸部や手術の既往のある方、高度な大動脈の石灰化、低左心機能などのハイリスクの方、高齢の方には適していませんので胸骨正中切開による通常の手術をお勧めしています。低侵襲手術が可能な患者様にはできるだけ希望に添えるようにしています。